2014年5月24日土曜日

クロントイのスラム街探索(2014年5月22日)

メーホンソンから夜行バスでバンコクに戻る。

夜行バスはタイ北部の曲がりくねった山道を進むもので、
普段乗り物酔いには強いと自負している自分でも気持ち悪くなった。
当然、車内での被害者は自分よりひどく、
前席のおばさんと斜め後方の少年は嘔吐で苦しそうだった。
夜間雨が降り出してからが最悪で、
なんと非常口に近い窓際の席に座っていたからか雨漏り。
Tシャツとエアコンの寒さ防止に被っている毛布が濡れてしまい、
ギンギンとエアコンで冷えきっている車内で風邪を引きそうで、
ほとんど眠ることができなかった。

朝7時前にバンコク到着。
カオサンに戻る前に気分転換としてルンピニ公園近く、
マレーシアホテル周辺の安宿に泊まってみる。


が、意外とカオサンより安いゲストハウスは少なく、
実際に見つけることができた150バーツ(450円)の安宿はそれ相当で、
Wi-Fiなどのモダンなサービスはなく、
言葉は悪いが、幽霊が出てきそうな薄暗い木造の宿だった。


マレーシアホテル周辺は地下鉄ルンピニ駅に近く便利そうだが、
逆に言うと地下鉄を利用し、BTSに乗り換えないとあちこち行けないので、
市バスでどこでも行けるカオサンより不便に感じる。

さらに、以前何度か訪れてよかったルンピニナイトバザールが閉鎖されており、
マレーシアホテル周辺の夜は静かで物足りないので、
わずか2泊してカオサンに戻る。

一方、5月20日にタイ陸軍に戒厳令が発令され、
カオサンへのアクセスの中心となる民主記念塔近辺の道路が封鎖されたりと
新たな不安が浮上してくる。

嫌な予感は別のところで連鎖しているようで、
チェンマイに移動するまで2週間滞在していたカオサンの宿が
戻ってみると改装中で、宿の建物の一部が取り壊されており、
夜はときおり断水になったり、工事音がうるさかったりと、
宿を変更する必要性が出てくる。

いろいろと小さなトラブルや不安はあるものの、
バンコク街歩きを再開。

クロントイへ2日にわたり行ってみる。
クロントイはスクンビット通りの南側から港があるチャオプラヤ川に及ぶ地域で、
庶民的なクロントイ市場やバンコク最大のスラム街で有名である。
モダンなバンコクは大好きだが、庶民的でアジア的な部分も見たい。

クロントイ市場へのアクセスは容易で、
マレーシアホテル近くの地下鉄ルンピニ駅の一つ隣がクロントイ駅だし、
カオサン周辺からは47番のバスでダイレクトに行ける。

ちなみに、スラム街とはいえ、
ブラジルのリオデジャネイロの小高い丘を埋めるファベーラや
インドのムンバイの巨大な貧民街のように広がっているのではなく、
小さなスラムのような低所得層の住宅地が密集している地域という感じだった。
過密した粗末な家屋が不意に現れるフィリピンのマニラのスラムとも異なる気がする。

まずは碁盤の目のように広がるクロントイ市場に入ってみる。
入った瞬間、猥雑さと生臭さに圧倒される。
モダンなバンコクからかけ離れた下町の空気と言うべきかもしれない。



売られているタイ料理の惣菜はどこでも見かけるように美味しそう。
また、アヒルは生きたまま売られていたり、
ニワトリは皮を剥がされて売られていたりする。



このクロントイ市場北側に運河というか、
ゴミが浮かぶドブのような液体の澱みがあるのだが、
運河に沿って崩れ落ちそうな家屋が並んでいた。



クロントイ市場から運河に沿って東に進んでいくと、
いかにもそれらしき家屋の密集地帯の入口が見えた。
入ってみようと思ったが、入口前の広場には犬が数匹たむろしており断念。
やはりタイでは犬が怖い。

それでも、広場北側には先の家屋密集地帯に繋がりそうな路地が見つかり、
侵入してみる。



炎天下のバンコクにおいて、
トタン屋根に遮られて狭すぎる路地はあまり陽光が入らない。
ドアが開け放たれている家屋もあり、覗いてみると、
おばさんが寝ていたり、子供が遊んでいたりする。

そのまま東に歩いていくと、明るい大通りに出た。
ちょうど運河に橋がかかっており、様相をうかがえる。
また、よく見ると運河に沿った小道があるようなので引き返して入ってみる。




運河に張り出し、後から付け加えられたような板の上で料理をしたり、
洗濯をして生活をしている人々がいた。
ゴミは直で運河に落とすからか、ところどころで異臭が漂っている。
先の路地と同様、開け放たれている家屋も多く、
粗末で薄暗い部屋でおばさんや子供が寝転がっている。

戸の向こうが完全なる闇の部屋があったり、
闇の中でロウソクのオレンジ色の火が揺れずに灯っている部屋もある。
一度、運河に沿った道を進み、途中で引き返した時、
ロウソクが灯る部屋からいきなり老婆が顔を出したので驚いてしまった。
タイ語で何かを喋り、闇の部屋に誘ってきたが反射的に断ってしまう。
ロウソクだけが灯る部屋は何に使われているのは分からない。
ただ、以前に雑誌で見た光景を想起させる。
それはロウソクの明かりの下で痩せこけた老人が横たわりながらパイプを吸うアヘン窟の写真だった。


最初にクロントイに訪れた日はあてもなく歩いていたので、
2日目は事前に地図を参照しておく。


クロントイ市場北側の運河が東側に延びており、
オレンジ色の高速道路と重なっている。
また高架下には線路が走っているようで、
運河同様、線路沿いにもスラムが形成されている確率が大きい。
オレンジ色の高速道路、線路南の細い路地も気になる。

実際に行ってみると、
高架下の運河の北側には今にも壊れそうな家屋が連なっていた。
ちなみに表通りから見ると、食堂や売店があったりと、
庶民的なバンコクの通りを思わせる。



高速道路南の線路に侵入してみると、
職人たちが線路の上では木材の家財を造っていた。
工場ではなく、線路上ということは安上がりなのかもしれない。



線路を西側に向かって歩いていくと、
庶民の生活の場が現れてくる。
線路脇の民家はメークロンで見た線路を覆う市場に似ていないこともない。



線路の左側、つまり高速道路と運河に並行した線路の南側に
細く薄暗い路地があるので、線路を離れて奥に進んでみる。
人がようやく歩ける細い路地ではゴミの収集が難しいからか、
無数のゴミが散乱しており、強烈な異臭を発しているところもある。
コンクリートの小道の両脇の排水溝は淀んでいる。



とはいえ、すでに取り壊されてしまったカオサン通り南側の狭い路地を思わせ、
懐かしさがある。
確かに公共サービスは行き届いてないのかもしれないが、
売店があったり、制服を着た小学生が歩いていたりと、
普通のバンコクの下町のようだ。
悪臭を含めてもインドの街の路地より清潔な印象を受けるといったら怒られるだろうか。



不衛生に感じられるのは、行き場を失ったゴミのせいだろう。
後で調べて分かったのだが、この地域はかつて湿地帯だったらしく、
コンクリートで覆い尽くすように小道が作られたそうだ。
だからか、コンクリートのない部分では湿地の面影がある。
残念ながら、現在は異臭を放つゴミ溜めの澱みになっているが。



細い路地を犬に気をつけながら探索していると、
賑やかな広めの通りに出る。
通りにはコンビニがあったり、下校中の小学生が遊んでいたりする。
賑やかな通りの南側にも細い路地はあったが、
碁盤の目で整然とした感じを受ける。
学校もあり、広場もあったりと、
裕福ではないものの、スラムと呼ぶには失礼な地域かもしれない。




一度、線路に戻り、ひたすら西に向かって歩いていくと、
気のせいか雰囲気が悪くなり、
高架下の線路沿いの家屋にたむろする男達の視線が気になったので、
潮時と思い、探索を切り上げることにした。




クロントイの路地歩きを終えて、BTSが走るサヤームを訪問すると、
同じバンコクとは思えないモダンさに白昼夢を見ていた気になる。





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2014年5月19日月曜日

外国人ばかりのパーイ、旅行者が全然いないメーホンソン(2014年5月18日)

せっかくタイ北部のチェンマイまで来たのだから
すぐバンコクには戻らず、
パーイ、メーホンソンに寄ってみる。

チェンマイからパーイまではミニバンで3時間ほど。
10人ほどの乗客のうち自分以外は皆中国人観光客で、
チェンマイ同様にパーイも中国人のブームだと容易に想像できる。

エアコンが効いたミニバンではいつものように寝入ってしまう。
ミニバンは曲がりくねった山道を進むので、
何度も窓に側頭部をぶつけた。

小さなパーイの町に到着。
ミニバンはAYAサービスという旅行会社の前で停まる。
AYAサービスではモーターバイクのレンタルを行っており、
また、英語よりも中国語表記が優先だけあって、
中国人観光客の溜まり場となっているようだ。
ミニカオサンなどと呼ばれるパーイではむろん西欧人バックパッカーが多いが、
それ以上に中国人の個人旅行者ばかりで驚く。
ラオスのバンビエンのようなバックパッカー街の雰囲気は薄い。
かわりに前に見たようなどこかの観光地の雰囲気が漂っている。

思い返してみると、
バックパッカーの聖地を期待して失望した中国の大理に似ている。
大理ほど観光地化されていないが、
少数民族のアクセサリーが露店で売られていたり、
シェイクの屋台がある。
バックパッカーの聖地とは裏腹に洒落たカフェや雑貨屋も見かけた。




なお、ネットで調べたところ、
かつてのパーイはことの良し悪しを含めてバックパッカーの聖地だったらしいが、
近年はタイ映画のロケ地になってタイ人の観光客が増え、
さらにチェンマイと同じく中国映画の舞台になったようで
中国人個人旅行者が急増したそうだ。
どんな秘境でも観光客が増えると、
自然と土産屋や高めのカフェが増え、
どこでも見るような俗な観光地になってしまうから残念である。



とはいえ、パーイはチェンマイに比べると、
のんびり過ぎる田舎で、
バイクが通るだけの閑散としたメインの通りや
バンガローが点在する川辺は眠気を誘う。
数日間ゆったりと過ごすには良さそうな町である。





しかし、パーイには1泊だけして、
着いた翌日にはメーホンソンに向かうことになる。

パーイでは小さなバス駐車場前のとあるゲストハウスに泊まった。
古い木造のゲストハウスの2階建ての部屋で、見た目は清潔。
観光地のパーイで200バーツ(600円)と安かった。

午後部屋で休んでいると、
枕元をゆっくりと徘徊する黒い虫を発見してしまった。
疑う余地もなく南京虫。
これまで7ヶ月近い住み渡りでは初めて見るが、
前回の世界周遊中に3度被害にあった史上最悪の害虫である。
以前、エチオピア、クロアチア、ムンバイで南京虫にやられたときは
痒さが一週間以上続き、
おぞましい刺された跡は数ヶ月消えなかった。

すぐに潰すと、赤い血がシーツにべっとりとついた。
まだ刺された症状はないので前の宿泊客が被害にあったのかもしれない。
レセプションに言ってすぐに部屋を変えてもらう。
新しい部屋も見た目は清潔だが、
シーツをはがしてマットレスの裏側を見たりした。
とりあえず血痕などは見当たらないのでこの部屋に荷物を移す。


すぐ南京虫の存在に気づき、部屋を変えてもらったので、
安眠がとれると思ったのも束の間、
パーイのナイトマーケットを見て歩き、
夜遅く部屋で寛いでいると、
いきなり足首に痒みが…。

蚊に刺されたような水膨れが足首に3つ点在していた。
しかも、シーツの上にはまさに今刺したと思われる南京虫の幼虫がいて、
潰すと血が広がった。
遅い時間でレセプションは閉まっており、
再び部屋を変えることはできず。
電気を消すと次々と現れる体験があるので、
電気はつけたまま徹夜で戦うしかない。

ベッドで体育座りをしていると、
電気をつけているのに体臭に誘われてか、
ちょこちょこと現れてくる。
現れてはまだ吸血されないうちに潰すので被害は広がらないが、
気が滅入ってくる。
黒ずんだ大きな成虫から茶色い小さな幼虫を午前3時まで10匹以上は潰した。

さすがに3時を過ぎると戦う気力も失せて眠ってしまった。
不幸中の幸いにも南京虫の存在に早めに気がつき、
奴らが嫌がる電気をつけたまま眠ったので、
刺されたのは腕に4つと足首3つで済んだと思う。
以前のエチオピアやクロアチアでは
夜中猛烈な痒みに襲われてから南京虫の存在に気づいたので、
何十ヶ所も刺されてひどかった。
今回は早い段階で奴らを発見でき、被害は最小限に抑えられた。


翌朝は宿を変えてまでパーイに滞在する気にもなれず、
ゲストハウス目の前のバス駐車場に行き、
8時半のメーホンソン行きのミニバンチケットを購入する。

再び曲がりくねった山道を3時間、
メーホンソンまで向かう。
ミニバンでは爆睡だったのは言うまでもない。

メーホンソンでは手持ちのロンリープラネットに載っている
フレンドゲストハウスに宿泊する。
ちょうど改装が終わったのか、
部屋はペンキ臭かったが、
塗り立てのペンキの部屋はむしろ心地よい。
マットレスだけの部屋なのに、
パーイのゲストハウスよりずっとよく感じられる。


バスルームでは猛烈に熱いお湯が出るので、
念のために昨日までの衣服やリュックを熱湯で洗濯した。
かつて南京虫が衣服に寄生したのか、
痒みが数日続くことがあったからである。
奴らは高温に弱いとのことだった。

パーイから一転、
メーホンソンには旅行者がいない。
ミャンマーとの国境が近いので、
タイ人以外の外国人はいるだろう。
しかし、チェンマイ、パーイで溢れていた西欧人や中国人の旅行者を街中で見ることはなかった。
1日メーホンソンで過ごして見かけたのは、
ゲストハウス近くにあるミャンマー風パゴタが美しい小さな湖のほとりで
ビールを飲んでいたドイツ人のカップルと
丘の上のパゴタで写真を撮っていたフランス人のカップルのみだった。



メーホンソンはそれなりに知名度が高い観光地と思っていたものの、
旅行者が全然いないタイの田舎町に新鮮味を覚えた。



ただ、メーホンソンが普通のタイの町と異なるのは、
ミャンマーにあまりにも近く、
タイ辺境の空気を漂わせているからかもしれない。




日中は暑いので夕暮れ時に丘の上に登り、
ミャンマー風のパゴダと西の山々、ミャンマーの国境に沈む夕日を眺めた。







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