2017年6月24日土曜日

カシミールからラダックへヒマラヤ山脈をゆく① シュリーナガル〜カルギル(2017年6月8日)

インドであってインドでないムスリム一色のカシミール。
チベットよりもチベットっぽいと言われるラダック。
インド最北部のカシミールからラダックへヒマラヤ山脈の峠を越えながら移動していく。


まずシュリーナガルからカルギルへ。
移動手段のジープはシェアタクシー乗り場で調べると900ルピー、早朝6時から6時半頃に出発するとのこと。
しかし迂闊にも滞在中のNoor Guest Houseのスタッフに誘われるままに予約をお願いしてしまい、
窓際席、早朝でなく午前8時発で1200ルピーも取られてしまった。
夜明け前の暗い中、無数の犬に怯えながらシェアタクシー乗り場に向かうよりマシとはいえ、無駄な出費である。
実際に午前8時に宿近くにピックアップに来てくれるジープは悪くなさそう。
バス移動でなく、悪路の山道をジープで移動するインド北部のスタイルはタジキスタンのパミール高原の旅を想起させてくれる。
他の乗客も途中ピックアップしてドライバーを含めて8人でシュリーナガルからカルギルへ。


車の往来が激しく、クラクションがうるさいシュリーナガル市街を出ると、
緑あふれる山々に囲まれた道を快調に進んでいく。
新緑の山の背景に雪化粧の山脈が見え、インドというよりアルプスのような景色。
シュリーナガルが「東洋のスイス」と呼ばれているゆえんを納得。


標高1700mのシュリーナガルから2000mの山道に突入。


スイスさながら、いやアルプス以上に壮大なヒマラヤ山脈を見ながらのドライブは清々しい。
1200ルピー払って窓側の席にしてもらって正解だった。
しかも進行方向右側は渓谷に面しており、終始ヒマラヤ山脈の絶景を堪能できる。



ジャンムーからシュリーナガルへの移動のようなジープやトラック、軍用車両による渋滞はなく、
ときどき山羊や羊の群れが進行を妨げるも朝から微笑ましい光景である。
ヒマラヤ山脈へと向かう旅を一番実感できるのはやはり車での移動だろう。


標高が上がっていくと、山々の上部にあった雪が迫ってくる。
まだ雪解けが始まった6月。
でこぼこ道には雨というより雪解けによる水たまりが点在している。
川の近くに溶けきっていない雪の塊もある。

 

やがてインド人観光客に人気のリゾート地が近づいたようでキャンプ場や乗馬の馬が目立つ。
この近辺ではとびきり目立つ荘厳な山が雪をかぶって現れる。
頂の雪は夏になっても溶けないのかもしれない。
まさにポストカードのような絶景。


渓流に沿ったヒマラヤ山脈の絶景が続き、
ジープはやがてジグザクの山道を一気に登っていく。
標高もじわじわと上がり、山々も目の前に見えてくる。


窓から入ってくる風は涼しいを超えて冷たく、
長袖を準備してきてよかったと思う。
3000mを過ぎると雪化粧の山脈、青い空、白い雲のコントラストがはっきりしてくる。
移動中は居眠りが多い自分でも今回はまったくまばたきする余裕もないほどの絶景のオンパレード。




断崖絶壁を通る道は細くガタガタで、ハンドルを誤れば3000mの世界から下界どころか、奈落の底へ落ちてしまいそう。
こんな山道を手作業で築き、土砂崩れの後もスコップで整えてるインド人作業員に脱帽。
ジープはいつの間にか雪解けしていない高さまで上昇し、道路の両脇に雪の壁が迫っているところもある。
車を降りて雪を触っている観光客のようにはしゃいでみたいものだ。


ジグザグの山道を登りつめ、ヒマラヤ山脈の峠にたどり着いたようだ。
途中、「ラダックへようこそ」という看板を見かけた。
再びインド人観光客がやたらと集まる場所があり、キャンプ場やカフェがいくつも並んでいる。
雪原を歩いたり、踊っている低地からのインド人観光客が多い。
パキスタン北部やアフガニスタンの民族に顔が近いカシミールに浸っていると、
浅黒くて彫りの深い下界からのインド人が外国人のように見えてくる。
観光客が集い、チャイをすすっている場所を過ぎると雄大な大自然一色になる。
4000m級なのにひたすら同じ標高なので高低差を感じないパミール高原のようだ。
でもヒマラヤ山脈の峠はまばらな雪により立体感があり、目を離すことができない。


検問のある橋を渡る。
西欧人旅行者がなにやら紙に書いてチェックを受けていたが自分は呼ばれず。
チェックポイント近くにあるモニュメントと雪山を眺める。


より空が濃い青色になり、若干空気が薄くなってきた。
iPhoneでチェックすると標高3500mの世界を走っている。


青い空をまぶしすぎる白い雲がゆったりと流れ、影が山肌を移動している。
ときどき緑の山肌に綿のようなものがいっぱいへばりついており、
目を凝らして見ると羊の群れだった。
世界の屋根を貫く道路から見えるのも絶景だらけで、
1年や2年かけて世界一周してもそうお目にかかれないような荘厳な山々がひたすら続いている。

 

それにしてもまったく休憩なしで走り続けるジープ。
さすがに尿意がピークに達し、車を止めてもらう。


大自然の中での普段より長い立ちションの後はようやくカメラを取り出しての写真撮影。
車の窓からのiPhoneカメラでは限度があるし、でこぼこ道でブレてしまう。



13時頃にランチタイム。
雪山に囲まれた村はムスリム一色でラダックというよりカシミール。
食事はカシミール食堂でのマトン・カレーライスだった。


午後も標高3000mの世界を快調に飛ばし、カルギルに到着したのはシュリーナガルを発ってから8時間後の午後4時だった。

カルギルもまたモスクが多いイスラム教徒だらけのカシミールの町。
それでも中央アジア系に近い顔立ちが目立つ。
アーリア系のインド顔とは明らかに異なり、女性が頭にスカーフをかぶっていたりと違和感のあるカルギル。
ムスリムの女性はなかなか写真を撮らせてくれないが、少年たちは陽気にフォト、フォトとねだってくる。



カルギル自体は小さな町で当初は二泊しようと思ったけれども一泊で十分。
意外と宿探しに苦労し、何度か高めのホテルの部屋を見せてもらってからバスステーションから近いホテルに適当に入る。
ホットシャワーはあるがWiFiはなし、まあ悪くない宿に400ルピーで宿泊する。


標高2700mで心配していた高山病にまだかからないカルギル。
夕暮れまで小高い道を歩いて周囲のヒマラヤを眺めたりした。


町中のモスクからアザーンが流れる中、
中央アジアやパキスタンを彷彿させる多民族の街をぶらつく。
山岳の人々はいろんな意味で濃厚。



夕食はランチに続き、マトン・カレーライス。
羊だしのきいたスパイスいっぱいのカレーは確かに旨いが毎食だと飽きてくる。


曇っているため夕焼けを期待できない食後、
インドであってインドでないカシミール、ラダックにおいてもお馴染みのチャイをすすった。


翌日は早朝5時起きでラマユルへ向かう。










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2017年6月17日土曜日

カラコルム山脈が展望でき、静かなダル湖を持つシュリーナガル(2017年6月7日)

40度越えのジャンムーから11時間かけてシェアタクシーという名のジープでたどり着いたシュリーナガル。
インド人というよりもパキスタンやアフガニスタンに近い人々が住む独特な世界、
インド最北部のカシミールで思考停止していた脳をクールダウンしてみる。
遠方に7000m級のカラコルム山脈が見え、
山々を映し込む鏡にように穏やかなダル湖を見て過ごすのにいい。



シュリーナガルの名物と言われるダル湖畔に無数に浮かぶハウスボートだけれども、
動かないボートに滞在することにあまり魅力が感じられない。
朝晩が涼しく、日中は暑くないシュリーナガルでの三日間は家庭的で居心地いい、
運河沿いのNoor Guest Houseに宿泊する。
これまで子供部屋に使っていたのか、ぬいぐるみや家族写真が飾られた部屋で400ルピー(700円)。
アムリトサル以来にネットがつながるのが嬉しい。


Noor Guest Houseの入口を一歩外に出ればダル湖への続く運河が広がっていく。
利便性が悪そうなハウスボートにあえて泊まらなくてもいいだろう。


ちょうど夕暮れ時前にシュリーナガルに到着したのはグッドタイミング。
ダル湖の背景の山々のさらに向こうに雪化粧のカラコルム山脈が見える。


インド人にとって避暑地の一つであり、今が旬の観光地だけあってシカラと呼ばれる船に乗って湖を遊覧するインド人観光客が多い。


運河沿いを進んでいくと、ローカルな住宅地、ダル湖に浮かぶ水上村に入る。
多くの人々がハウスボートを営んでいるかのようにハウスボートだらけ。


湖に浮いた家屋に住む人々の足は小さなボートのようで、
オールを漕いで運河を進むおじさんたちやおばさんの姿がある。



喧しい車やバイク、リキシャーのクラクションの音からかけ離れた静かなダル湖に一気に虜になってしまいそう。
イスラム教徒が多いシュリーナガルだけあってモスクからのアザーンがインドの他のどの街よりもはっきりと聞こえてくる。


正直、多くの仲間と過ごして楽しく、堕落と快適さに泥酔したバンコクを離れて直後のアムリトサル、ジャンムーは暑すぎて町歩きどころじゃなかったし、たった3ヶ月ぶりとはいえ汚くうるさいインドにバンコクへのホームシックに近い感情を抱いていたが、
澄んだ空気の向こうに沈んでいく夕日、トビの鳴き声が聞こえる穏やかなダル湖に癒されていった。
インドであってインドでない未知なるカシミール。



23時頃の停電と同時にネットサーフィンも読書もできなくなる夜は暇でもあったが、
久しぶりにエアコンやファンがなくても涼しい部屋で快眠。
朝8時に一度目覚めると涼しいというより半袖では肌寒いほどであり、
あいにく朝から雨が降っていたので二度寝した。
太陽が出ていなくても午前10時を過ぎれば寒くなく、暑くなく、まさに適温。
観光地だからかダル湖周辺ではカシミール料理店が見つからず、
パンジャーブ風のターリを早めのランチとしてたらふく食べ、湖畔を再びぶらついてみる。


厚い雲がかかっているとカラコルム山脈の頂は見えない。


ハウスボートの斡旋やシカラのボートツアーの客引きが多すぎる湖畔のブルヴァードを歩く。
最初は単なる観光アトラクションと鼻で笑い、興味がなかったものの、
次から次へと静かな湖面を移動するシカラに魅かれていく。
うざいほど声をかけてくる客引きに負けたわけじゃないけど乗ってみる。


できるだけ家族連れのインド人観光客がいないところで交渉。
案内板には1時間で500ルピーと記載されており、政府公認料金だから割引できないと言われた。
500ルピーは高すぎるので去ろうとすると400ルピーと値下げが始まり、自分も1時間150ルピーから開始する。
客引きは腐るほどいるので安くならないならすぐ去ろうとしたら一気に200ルピーまで下がって交渉成立。
湖遠方と運河に張り巡らされた内側のどちらがいいかと尋ねられ、内側を選ぶ。
インド人の新婚カップルじゃないのだから湖の遊覧入らない。
水上マーケットやフローティング・ガーデンと呼ばれる水上農園の方が興味がある。
ちょうど1時間と腕時計を指差され、自分一人だけのシカラをゆっくりと漕ぎ出す船頭。


南側の空は晴れてきており、雲の上空に薄っすらと雪山が展望できる。


浅い湖の上に家を建てて生活する人々を水面レベルから眺めるのは興味深い。
どことなくブルネイの水上村やミャンマーのインレー湖の水上世界を思わせる。


湖に面した商店もあり、住民は船を寄せて買い物している。


シカラで遊覧する観光客向けのカシミヤのショールや手芸品を得る店も多い。
船頭は何度もお土産が安いからいいと勧めてきたが、1時間の遊覧時間が短くなるので断固として断った。

暇な駄菓子屋の男性が店先から釣り糸を垂らしている。
湖は透明で泳いでいる小魚をよく見かける。


ミャンマーのインレー湖でも見た水上農園へ。
湖面に浮いたまま野菜を育てているそうで上から押し付けると水中に沈み、
また浮き上がってくる。



ハウスボートに宿泊しながら窓の外の湖面に広がる蓮を眺めるのも悪くないかもしれない。


1時間のダル湖巡りの間、水上マーケットで生活する人々や香ばしい串焼き肉を焼きながら船をこぐおじさん、カシミール独特の木造のモスクを眺めたりした。




最後は水上カフェでチャイを飲んでシカラ遊覧終了。
歩いていると絶対に見られない風景を船から見れて十分に価値があった。



シュリーナガルをより知るべく観光地のダル湖から離れ旧市街へ歩いていってみる。
装甲車や銃を持った兵士も多いけれども、それ以上に犬の数が凄まじい。
羊飼いの犬なのか、低地で見るより大きめの犬が5、6匹で昼寝している。
ゴミが散乱する場所には10匹以上の毛むくじゃらの犬が寝そべっていたりと夜は歩きたくない。
こちらに害はないとはいえ、兵士と犬にはカメラを向けないようにする。
カシミール独特の建築様式としてレンガ造りの建物に木造の窓枠がはめられている。


木造のモスクもカシミールの特徴だろう。
見慣れたモスクのミナレットと異なる緑色の重層屋根と尖塔が青い空を貫いている。



大通りを離れて路地に入ると、インドと思えないほど交通の流れが減る。
両脇にはレンガ造り、木の窓枠の建物が続いている。


川沿いにある一際緑色の尖塔が目立つシャー・ハマダーン・モスクへ。
橋から眺めると旧市街の家屋とのコントラストが鮮やか。


シュリーナガルで一番美しいと言われるシャー・ハマダーン・モスク。
木造の尖塔に加え、入り口の装飾がイランやウズベキスタンのモスクで見たようにきめ細かい。




10ルピーの寄付金を箱に入れたにもかかわらず異教徒は立ち入り禁止。
開け放たれたドアから内部を覗くしかなかった。


旧市街は職人の町。
また、モスクからアザーンが流れるムスリム一色の世界。
金細工をテンポ良く叩く音がレンガ造りの路地に響き渡る。



昼飯はジャンムー以来のカシミール料理店にて。
観光客向けのレストランが多いダル湖周辺でなかなか見かけなかった羊の肉団子とつくね入りのちょっと辛いカレーはうまい。


肉団子は同じだが羊のミルクとだしで作ったと思われる酸味のある白いスープカレーも出してくれた。
ジャンムーで食べたチキンカレーも焼いたチキンとは別にスープは羊だしだったし、
カシミール料理は羊がメインなのだろう。


食後公園で休息してからシュリーナガルのどこからでも目に入る小高い丘に立つ要塞を目指す。
軍に管理されているので入場するのに別料金のパーミットがいるとか。


公園では子供達が遊んでおり、牧歌的な空気が流れている。
思えば、暑すぎるインドの低地の公園で遊んでいる子供はいなかった。


相変わらず犬だらけの道を進み、大きな門をくぐって丘を登っていく。
たどり着いたのは丘の中腹にあるモスク。
地上からロープウェーでもアクセスできるようだ。



モスク周辺にも10匹以上の犬が昼寝したり徘徊しており、
犬を不浄とするイスラム世界でこんなに犬が多いのも珍しい。
モスク手間の展望台からシュリーナガルを一望する。
カラコルム山脈へと続く山々が見える。


丘の真下には遺跡が佇んでいる。


正直、展望台からの眺めで満足したのでさらに要塞まで登らず。
モスクから丘の頂上にある要塞を見上げてから下山する。


再び旧市街に戻ってから巨大なモスク、ジャミア・マスジットを訪れる。
シャー・ハマダーン・モスクと違って異教徒でも中に入れるのが嬉しい。


ここもまたレンガ造りと上部が木造のカシミール独特な建築様式。
ジャミア・マスジットの中庭に噴水池と芝生があり、ムスリムのおじさんたちが芝生で寛いでいる。


のんびりとしたダル湖周辺といい、子供達が遊ぶ牧歌的な公園といい、
いまだカシミール紛争の緊張状態にあるとは思えないシュリーナガルの光景だった。
川沿いに戻ってから、中央アジアのウズベキスタンや東欧のバルカン半島にありそうなデザインの霊廟を見て旧市街巡りを終えた。


インドのようでインドでないカシミールの次はチベットよりチベットらしいと言われるラダック地方に向かう。












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